2023/08/14
たとえば、道路の大規模改修工事の説明会の原稿を作成する機会をいただきます。
こういった工事の説明会では、スタンダードな出席者は、
行政の担当者
建設会社の担当者
地域住民
こういったところです。
テープ起こし原稿を作成する際、どの方がどういった立場でどんな内容を話しているのかという点を押さえることが精度を上げるために重要なのですが、ここに注目すると興味深いことがわかります。
まずは行政、国土交通省や県の担当者ですね。施主にあたります。
次に建設会社です。行政から発注を受けて(入札の結果として受注して)、実際に道路の大規模改修工事を行います。
そして最後は地域住民の方々です。
行政が施主なのですが、実際に工事を行うのは建設会社になりますので、説明会の窓口といいましょうか、説明会をメインで取り仕切るのは建設会社になります。
通常、説明会の最後に質疑応答ということで、住民の質問に対して、建設会社の担当者や行政の担当者がこたえるわけですが、興味深いのがこの質疑応答の場面です。
住民の方々からすれば、道路を改修することは自分が意図したことではないので、騒音とか匂いとか、工事期間中、道路が使いにくくなるのがイヤだというのが働きます。
だから、「こういうふうにしてください。ああいうふうにしてください。」という要望を話します。当然ですね。
地域のためを思って話す方と、自分のためを思って話す方、その両方の気持ちを持って話す方で構成されています。
そしてその要望の中身は、実際問題できることとできないことの両方があるようです。
いっぽう、建設会社はといいますと、従前に立てた計画のとおりに進めたいと思うんだけど、地域住民の方の意見を聞いて、できるだけそれを反映しようとする。でもできないものはできないので、さあどうしたものかと頭を悩ませる。
行政のほうは、淡々と現状を説明するに留める。
どうやら建設会社と行政に働くのは、地域住民の方の意見を聞こうという気持ちと、無難にこの説明会および質疑応答を終わらせようとする気持ち。
とまあ、こういうふうに三者三様の思いがありますので、なかなかしっかり合わせるというのは難しいんですよね。
ですから、原稿を作成しているなかで、「ああ、この住民の方はホントに地域のことを考えていらっしゃるなあ」ですとか、「この建設会社の担当者さんは、真剣に質問にこたえていらっしゃるなあ」ですとか、「行政の方はホントに地域のことを考えているなあ」ですとか、その人ごとのそれぞれの気持ちがわかります。
意図していないことで起きる、自分の身の回りの変化。
こんなとき、人は防衛本能が働いたり、その意図していないことが起きることによって、もともとの自分をよりよいものにしようという気持ちが働いたりします。
話の立場や内容を注意深く捉えますと、こういった人の心理がよくわかります。
ちなみにこの手の説明会の内容は、登場人物がけっこう多いので(とくに地域住民の方々の人数)、内容もさることながら、話者の特定に注力することがポイントになってきます。