2023/08/14
デプスインタビューと半構造化インタビューは、どちらも質的調査で用いられる“インタビュー手法”の一種です。
両者は共通点も多い反面、主な目的や進め方、得られるアウトプットの違いにより以下のように区別されることが多いです。
1. 主な目的・位置づけの違い
デプスインタビューは・・・
- 個人の深層心理や潜在的なニーズ、行動の背景などを徹底的に掘り下げて理解することを重視。
- マーケティング・ユーザーリサーチで、消費者インサイトを深堀りするとき、新商品のコンセプトづくりやブランディング調査、UXリサーチなどで「深い」動機を知りたいとき
- 答えやすい表層的な回答だけではなく、普段は言葉にされにくい心理的背景や感情を言語化してもらう。
半構造化インタビューは・・・
- あらかじめ用意したテーマや質問項目はあるものの、柔軟に質問の順番や深掘りを変化させながら、幅広い情報を収集すること。
- 社会科学・教育学・組織内調査など、アカデミックから実務まで幅広く活用
- プログラム評価や組織文化の把握など、「特定のテーマ」について多様な事例や幅広い意見を集める際
- あらかじめ設定した大枠(質問ガイド)に沿って、比較的体系立てて情報を得つつ、必要に応じて追加質問や話の展開をしていく。
2. 質問構成・進め方の違い
デプスインタビューは・・・
- 会話の主導権はインタビュアーが持ちつつも、相手が自由に話せる時間を長めにとり「本人も気づいていない思考」まで掘り下げる。
- 事前に大まかなテーマや仮説はあるが、質問の数を最小限にとどめ、相手のキーワードや感情を手がかりに掘り下げていく。
- 相手が本音を話せるよう、リラックスした雰囲気づくりや傾聴が極めて重要。
半構造化インタビューは・・・
- 重要な質問は明確に用意しておくが、順番や深堀りの仕方は状況に応じて変更。
- ある程度体系立てて進行
- 「先にAのトピックを聞き、その後B、Cへ」といった進め方を想定しつつ、インタビュイーの反応に合わせて柔軟に質問を追加。
- テーマに対する複数の視点や事例を比較できるよう、同じような流れで他のインタビュイーにも実施することが多い。
3. 得られるアウトプット・分析手法の違い
デプスインタビューは・・・
- 潜在意識や感情、行動の背景など、“深い”情報が得られる。
- 人によって内容が大きく異なるため、統合・比較するよりも「個別のストーリー」を紐解くことが中心。
- インタビュアーのスキルや分析のノウハウが必要。発言から行間を読んだり、言語化しにくい微妙なニュアンスをくみ取る。
半構造化インタビューは・・・
- 同じトピック・質問がある程度共通しているため、回答の比較やグルーピングがしやすい。
- 参加者間での比較分析(共通点や相違点)もしやすく、再現性や説得力を高められる。
- コード化(発言のラベリング)やカテゴリ分類など、質的研究の典型的な分析方法が取り入れやすい。
結論としては、どちらも「オープンに話を聞く」点では共通していますが、デプスインタビューは“より一人の深い部分を掘り下げる”傾向が強く、半構造化インタビューは“あらかじめ決めたテーマ・質問項目をベースに、複数の事例や視点を整理しつつ深く聞く”手法と考えるとわかりやすいでしょう。
付け加えるとすれば、デプスインタビューだからと言って、まったく質問を準備せずにインタビューに臨むはずもありませんし、インタビューをしようと思うと、ある程度、体系立てて質問をしないと、ただの雑談になっちゃいますしね。その意味で、両者は、インタビューの特性としては、上記の説明ほどは違わないのかもしれません。